骨折して19時間待たされたけど診てもらえず、請求書だけ来た件

医療に関するニュースが増えた今日この頃、海外での事件を適当にググってみた。翻訳および要約は私による。個別の事件について分析はできないし、していない。だけど、どうやら日本のように搬送先が決まらないというケースは、あまりないようだ。
つい先月のニュース(Fox, MSN

骨折したら病院で19時間も待たされて、医師の診察をあきらめて帰ったのに請求書が来たというダラスでの話。この病院では、救急でやってきた5人に一人が、待ちきれずに帰るという。ナースが全身状態を診ただけだが、その分が請求されてきたらしい。

死者は出ていないから、まだマシだ。
さかのぼって2007年のニュース

2007 年5月9日に、搬送された病院で45分間待たされて死亡したカリフォルニアの女性が全米で話題になった(Wikipediaに、その患者さんの項目があるほどだ)。消化管穿孔で吐血していた彼女は、傍目にも死にそうに見えたので、通りすがりの人までが「病院で死にそうなのに、無視されている人がいる」と救急に通報したという。だが病院のトリアージナースは信じようとせず、以前に暴言を吐いたことなどを理由に警察に連行させようとしたら、本人が死亡した。

これに関連して、ERの抱える問題が報道された。
ER Wait Time Problems Widespread(June 28, 2007 )

救急治療室ことERで手当したあと、入院ベッドがないためにそのままそこに放置されていることを"boarding"という。ERのドクターにアンケートしたところ、約65%がboardingによって患者の調子が悪くなるのを経験し、23%は、boardingのために死亡した患者を自身が経験していた。

さかのぼって2006年の記事
Hospitals work to improve ER wait times

ERで待たされた時間の州別平均
アリゾナ州(4時間57分), メリーランド州(4時間7分), ユタ州(4時間5分),ニューヨーク州(3時間58分), フロリダ州(3時間57分)

いろんなニュースがあるものだが、これでもアメリカだから、崩壊しきったイギリスよりは絶対にマシだろう。とりあえず病院には運んでいるが、病院での対応が問題と考えられる。どちらの国も、医師の待遇は日本より遙かに上だ。外来は30分に一人だけ、それを超えたら何ヶ月先でも延期するだけ。この記事のように、手術を待たされている間に死亡したようなケースも、日本ではこれから増えるのかもしれない。

以下、イギリスでの記事を羅列。
先月のニュース:病院で4時間待たされて死亡、訴訟を検討中
これも先月:一時間近く、救急車が来なくて死亡
2005年、5時間待たされて、辛抱できずに帰宅してから死亡。あと45分待っていたら呼ばれたのに、とのこと。
2004年、救急車が7時間来なくて、到着直前に絶命
2003年、ストレッチャーで8時間待たされて脳膿瘍で死亡
2001年、9時間待たされたあと死亡7時間待たされたあと死亡42時間待たされたが死亡せず。(生存したから、42時間も待てただけだが…)

私自身も欧州に住んだことがあるが、ヨーロッパ最大の都市であるパリに住んでいる人たちから話を聞いたことがある。それこそ映画「Sicko」でも、優秀な医療サービスの代表みたいに描かれたフランスの首都だ。そこで、夜中に子供を診てもらおうとすれば何時間も待つ必要があるので、高額で往診してくれる医師を頼むしかないというのが、共通認識だった(たしか一万円くらいで来てくれるが、薬を出すだけみたいな)。実際に救急で6時間待たされた、という話もあった。そもそも病気が往診で事足りる程度ならいいが、重症だったら病院に行くしかない。上の記事のように19時間も待つという体力も気力も、日本人にはないだろう。こんな状況が日本にあるとは思えない。でも日本の医師の給料は、どこよりも安い。その分は、誰が負担しているのか。さらに日本だったら、高額で往診する医師だって叩かれることだろう。